これは多摩川の土手から見たお月様。西の空に沈む前。
落ちてしまいそうな程大きく見える。蜜柑色。
あと少ししたら満月なんだね。
もう今すぐにだって、お別れかもしれないお友達のHちゃんを想い
月をただただ見つめた。
私はさっきまで彼女が入院している病院にいた。
でも朝までにやらなければならない仕事がある…。
一度帰宅することを決め、Hちゃんを一人で見守る妹さんに、
また来るからと伝えてエレベーターに乗った。
病院の通用口の鍵を開けて外に出ると、見慣れた車がある。
あぁ金井さん待機していてくれたんだ。
ダイアログを共に運営している、
この友に私は何度月を見せてもらっていることだろう。
真っ直ぐに家に帰れない時、切り替えが上手く出来ない気持ちの時に、
彼は何も言わず黙って私を海や月に運んでくれる。
満月になる頃、Hちゃんはもうこの世界ではない所で月を眺めているのだろう。
きっと、蜜柑みたいな月の雫を飲むことだって出来るんだ。
彼女のご家族からターミナル・ケアの依頼を受け、出会った私達。
やがて最期の友となった私…。
二人で泣いたね。。まるで恋人みたいに。お互いに好きになってしまったから。
「もっと早く出会っていたらよかったね」ってHちゃんが言う。
「私達の1日を10年に見立てよう。そしたらもうすごい年月をかけたお友達…」と返す私。
そう言葉では言いながら、彼女のいのちに変化を見た帰り道、
私はやはり泣いてしまった。
そんなことを知った友達の忍昭和尚さんも彼女のために、
ずっと祈ってくれている。
和尚さんは「いのちのバトン」を読んで、私の活動を応援する仲間になってくれた。
こうして沢山の人に支えられているから続けることができる。
きっと彼女のバトンは妹さんに渡るのだろう。
「幸せは毎日の暮らしの何気ない小さな笑いの中にある」と
Hちゃんは言った。そう本当にそうだね。
Hちゃんの伝えたいことを、月の下でもう一度なぞる。
そろそろ帰ろうね。金井さんありがとう。